駅のホーム
後ろから2両目
ここは少し空いている
今日も寒い朝だ
寒いのは嫌い
でも 息が白いのは好き
ハーっと何度かやってみる
さっき飲んだ珈琲の匂い
向かいのホームに立つあの頃のわたし
ダッフルコートのポケットに手をいれたまま
ハーっと白い息を眺めて
覚えたばかりの英単語を空になぞる
こどもと思われたくない気持ちとウラハラに
短すぎる前髪
窓ガラス越しに映るあの頃のわたしと
お気に入りのリップをつけたおとなのわたしが
重なる
寒い冬をもう何度重ねたの?
いつの間にか
ダッフルコートが一番似合う年齢になっていた
冷たい指先からぎゅっと
あの頃のわたしごと抱きしめてあげたくなった
思考も表情も体系も
可愛すぎたあの頃より
今 の方がずっと しっくりくるのは
可愛さを秘めているから
-出演-