12年務めた会社を退職する
「プリンアラモード」食べに行こうよ
同僚が誘ってくれた最後のランチは
カフェでもパスタでもない
”喫茶オーシャン”
2人で食品サンプルをながめては
ここのプリンアラモード
絶対美味しいよね~
と言いつつ、いつも入る勇気がでなかった喫茶店に
ついに入る日がきた
カランカラン
四人掛けの席に
2人で座る
赤いソファの席
とびきり愛想がいい訳でも
現実から遠のくでもないこの空間は
すんなりとわたしたちを受け入れる
「プリンアラモード2つお願いします」
伝統的なツイードのジャケット
赤い口紅にブラックコーヒー
なんかカフェより落ち着く…
どれだけの時の流れを吸い込み
ほころび
時代の変化を受け入れてきたのだろう
きっと、昔と今も変わらぬこの店では
どの時代であっても
その時代に似合ってきたのだ
見栄やプライド
余計な装飾を纏い過ぎたわたしたちは
時に迷子になる
立ち止まることも忘れ
置いて行かれた気になり
いつも離れて行ったのは
自分
ということを忘れる
プリンアラモードが運ばれてきた
真っ赤なさくらんぼ
バナナとオレンジ ホイップクリーム
おめかしリンゴ
プリンが揺れる
「昔から変わってないのよこのプリンの作り方」
喫茶店のしゃがれ声のお姉さん(?)が
そう教えてくれた
いいものは変わらないのよ
プリンのレシピみたいに!
さいごの一口をスプーンですくった
もうすぐお昼休みも終わりだ
過去にタイムスリップしたようで過去ではない
古いようで古めかしくもなく
初々しさはないけれど
どんな時代とも馴染み
どんな世代も受け入れる
”喫茶オーシャン”
-出演-